散らないサクラ
「てめぇ、センコーか」
吠えるように言うと、女はまた笑う。
「そ。アンタのクラスの副担任」
黒王学園、それが俺の通うはずの高校の名前。
世話になった覚えはないが5年間、名前を置いている場所だ。
誰もが俺を腫れもの扱い、それが当然の世界。
恐怖の眼差し、怯えた雰囲気。
胸糞悪い、俺にとって牢獄でしかない場所。
そしてこいつは、そこのセンコー。
「なんの用だ」
今まで学校に来い、と頼むような命令を俺は蹴ってきた。
それが今更なんだ。
「何の用って、さっき言っただろ? アンタを迎えにきたんだって、秋羽」
「……気安く呼ぶんじゃねえ」
名字は嫌いだ。
だが、センコーなんかに名前で呼ばれたくもない。
唸るようにして威嚇するが、女は動じない。