散らないサクラ



「……俺の願い……、一個聞いてくれるんだろ?」

「ああ。……なに?」



何かを悟ったように、柔らかく笑う佐倉。

やめてくれ、そんな風に俺を見るのは。

俺が酷く餓鬼のようにみえて、俺はますます自分を恨まずにいられなくなる。

だが、そんな思いも俺は振り払い、そして佐倉の腹部に手を這わす。




「――――お前を、抱かせてくれ」




了承を待たず、俺は佐倉に噛みつくようにキスをする。

驚きもせず、固くもならず、それを受け止める佐倉。

暖かい物を体中に感じながら、俺は必死に何かを埋めようとする。



広がる佐倉の匂い、女特有の柔らかさ。


熱、熱、熱。


愛しいと思う、感情。



「……秋羽」



呼ばれる名前。

それだけでほんの少し残っている理性でさえぶっ飛びそうになる。



俺はこの女が欲しかった、ずっとこの腕に抱きたいと思っていた。

でも、この女を抱いてしまったら認めなくてはいけない。



――――佐倉からの愛情を貰えない事を認めなくてはいけない。



―――――……『セックスでもなんでも、体の関係ならいくらでもなってあげる。愛情やら恋しい気持ちやらを求めるなら、他をあたって。あたしはアンタにその気持ちを与えてやれない』



あいつが言った言葉を思い出しながらも、俺の本能はただ一つを追う。


この女の全てを知りたい、欲しい、感じたい。


きっと理性が残っていたとしても、俺はいつかこの行動に出ていたんだと思う。

それが早まっただけ。



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