散らないサクラ



「……佐倉……、弥生っ……。愛してる」



貰えないなら、俺は与えることしかできない。

与えて、与え続けて。

俺は、……それでいい。




……思い出しても、この時の俺は情緒が不安定だったんだと思う。

目の前で番犬が佐倉にナイフを当てた時、全身の血の気がひいて、一歩も動けなくなった。

あんなのは人生で初めてだった。

頭ン中真っ白で、ただあいつを失いたくないと言う気持ちと。

そしてなにより、怖かった。



佐倉を失うことが何より怖かった。



あの夜はただ佐倉が生きている事を体全体で感じたかった。

そして俺は、初めて“女”を抱いたんだと実感した。



初めて“愛した女”を抱いたんだと……、感じた。




「――――愛してる、弥生」




だから、お前は俺が守る。







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