散らないサクラ
そしてあの頃の支えを頭に浮かべ、お互いの思考回路が繋がる。
「……弥生?」
「ん?」
「大丈夫か」
「何が」
「もうすぐだろう?」
その声に弥生は静かに瞳を閉じた。
ほんの少し、心臓が大きく揺れたのを感じ、そして瞳を開ける。
小さく灯る瞳の光を感じながら、弥生は顔をあげリョウを見る。
「毎年同じ質問は飽きたよ、リョウ。同じ返事を返すのもね」
にっ、と歯を出して笑って見せる。
「……大丈夫じゃない。その日だけあたしはあの時の自分に戻るだけ」
その後に少し寂しそうに歪んだ顔。
リョウは毎年同じ光景を目の当たりにし、そして同じように事を繰り返す。
「そん時は、俺も一緒だ」
短く切られた髪を野太い指が梳く。
とても悲しい色を秘めた声色は、バーの中にそっと溶けていった。
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