散らないサクラ
「あんたたちより、ふたつ上だけど、まぁ、仲良くしてやって!」
誰が仲良くするか、今にも教卓に唾を吐きかけてやりたくなる。
……佐倉がいるからンな真似はしねえが。
俺は小さく汚ねえ空気を吸い込み、額から金髪を掻きあげる。
「とりあえず、秋羽の世話係を原沢にまかせたからいろいろ聞いて」
そう言って指を差した佐倉。
指の先に目をやると、不機嫌そうに窓辺を見つめるポニーテールの女。
「原沢、お願いね」
「…………はい」
不機嫌そうな返事。
ちっ、こっちだっててめぇなんざの世話になりたくねぇよ。
原沢と呼ばれた女は一呼吸置いて、窓辺に向けていた不機嫌そうな顔を俺に向けた。
少し怯えた瞳が俺を捕え、そしてすぐに伏せられた。
弱冠、いや大分イラツキと不安と、ムカつきを抱えながら、俺は原沢と呼ばれた女の隣に座った。
* * * *
「原沢柑奈(はらさわかんな)」
「…………」
「…………」
中休み、女は自分の名前を言った。
その後は無言。
俺はなんだかアホらしくなってきて、体に入れていた力を抜いた。
所詮、あと一年もない。
さっさとこの檻の中の時間を終わらせてしまえばいい。
俺は大きく息を吸って、吐く。