散らないサクラ


「ンな目すんじゃねえ」

「…………」

「てめえに危害を加えねえ」

「…………」

「…………なんもしねえ」



ああ、面倒くせえ。

未だに警戒心を解かねえ女、いや、原沢に俺は餓鬼を宥めるように言う。



「……俺は獅堂秋羽」

「…………なんで」

「あ?」

「なんで、学校に来たの?」



その言葉に棘がないのは声色で分かった。

ただ純粋に謎だったんだろう、今まで拒否していた俺がここにいる事が不思議だったんだろう。



なんで、か。



佐倉にもリョウにも、理由を聞かれなかったから答えてない。

此処に来て聞かれるとは思わなかった。

俺はふっ、と小さく笑みを洩らし口を開く。

お前みたいな女が俺の芯の想いを聞くとはな。



「……俺自身を学ぶ為」



俯いていた原沢の瞳が、大きく開かれた瞳が俺を捕えた。


初めて合う、視線。


俺は俺自身を知らない、俺は小さい、俺は無知。

ただ拳だけを振い続け、その意味は逃げるため。

そんな情けない自分を変える為、そして俺自身を学ぶ為。

誰かを守れる一人前の男になる為に……、俺は此処にいる。


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