散らないサクラ
確認をし終わり、再び女に瞳を向けると何にも動じない凛とした顔がそこにあった。
ああ、どうしてこんなにも――――。
「でも堅気に手を出すほど、あたしは落ちぶれて無い」
凛とした顔、滴る液体、赤色。
美しいほどの表情、美しいと言う度合いを超えた真っ赤な色。
消したいと思うほどに強く、そしてしつこく追ってくる。
ゆっくりと広がっていく脳内の映像に俺の心臓が急激に変化をする。
ああ、くそ、こんな時に(確かに薬は飲んだのに)。
息が、息が、息が止まる。
―――ヒュゥ。
まるで風が窓から入り込んだ時のような音で喉が鳴ると、俺は床に膝をついた。