散らないサクラ


息が、息が、出来ない。

……赤が、赤が襲ってくる。



「は、……ひゅ……はっ」



周りの音が聞こえない。



ああ、何度目だろうか。



襲ってくるこの感覚は何度味わっても慣れることなんてなかった。

だだ、あの人が俺の事を呼んでいるってだけ。

早くこっちに来いと、手招きをして赤色を流し込んでくるだけ。

特別苦しいと感じるわけでもない、特別助けてと感じるわけでもない。



だけど、この感覚は特別俺を恐怖に陥れる。



飲まれる前に逃げなくては。

この赤にのまれる前に、俺は、逃げなくては。



―――ニゲナクチャイケナイ。




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