散らないサクラ
「相手に何かしてあげたい、気持ちを分かって欲しい、そう思ったら言葉にして自己主張しなきゃ」
ピクリ、とこめかみが動き、敵をみる時の様な気分で眼光を向ける。
「ンなもんとっくにしてる」
それが通じなくてイライラして、心臓が爆発しそうに痛くて、何も手につかねえほど馬鹿になってんだ。
てめえに何が分かる。
俺の咆吼のような声に少し怯んだ原沢だったが、俺の瞳を逸らす事はなかった。
「でも行動してもダメな時って、考えるだけで何も出来ずにいるでしょう」
くっ、と喉奥が締まる。
「傷つくのが怖かったり、相手の気持ちを考えすぎて動けなくなったり、色々あると思う。けどさ、結局それは行動してないって事だよ」
まるで核心をつかれたみたいな衝撃が身体に巡る。
ガン、と重たい鈍器で殴られた感覚にも近かったかも知れねえ。
俺は喉元に詰まった息を吐き出す。
そして自分に自嘲する。
「はっ、てめえもエスパーか」
前に弥生の事もエスパーかと思ったが、ここにもいたか。
原沢は俺の言葉にキョトンとして目を丸くしたが、少ししてから頬を緩めた。
ああ、そうだ。
あいつと向き合い、あいつを知るために俺は行動に出た。
そして拒絶され、成す術が見当たらず立ち往生している。
それが間違いだ。
俺には立ち止まる時間なんてあっちゃならねえはずだ。
「秋羽は直球勝負しか出来ないんだからさ、当たって当たって、砕ければいいんだよ」
原沢の柔らかい声がする。