散らないサクラ
「砕けちゃ意味ねえだろ」
「はは、そうだけど。そういう意気込みでって事」
俺の顔に生気が戻ったのを確認した原沢はいつもの様に笑ってみせた。
こんな俺にも心配してくれる奴がいるなんて前の俺からしたら、鼻で笑うような事だ。
心配されるほど落ちぶれちゃいねえとかなんとか抜かすだろう。
ひと呼吸置いて、深く息を吸い込む。
コスモスの存在自体の大切さや、誇り、人を好きになること、学校での生活。
それを俺に与えてくれ、教えてくれたのは弥生だ。
あいつがいなきゃ、俺はここに立っていない。
そんな女をみすみす逃してたまるか。
拒絶されようが、冷たくあしらわれようが関係ねえ。
俺はあいつを手に入れる。
「答え、見つかった?」
俺は口角をあげ笑ってみせる。
「ああ。砕ける勢いでぶつかってやる」
それでもぶつかって跳ね返されて、負けそうになり、立ち止まる事もあるかもしれねえ。
だが諦める事だけはしねえ。
そして、堂々とあいつの隣にたって、あいつを守れる様に。
俺は強くなる。
「……助かった。………………ありがとう」
何十年ぶりかに発した感謝の言葉は尻すぼみになって教室の隅に消えていった。
原沢はお礼の言葉をもらえると思ってなかったのか、目ん玉をまん丸にし、次いで満面の笑みを見せた。
「今度購買で奢ってくれたらいいよ」
そう言っておどけて見せた原沢を見て、初めてできた女友達と言うやつに何処かあったけえ思いを抱いていた。