散らないサクラ


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秋羽が膝を着いたと同時に歩、そして教師だと言った女が駆け寄った。



「秋!」



歩が秋羽の体を支えるようにして掴む。

息が出来ていないのだろう、ひゅ、ひゅ、と吸う音しか聞こえない。

秋羽の瞳に色はなく、苦しげな表情が一杯に広がっている。

周りの音も、映像も全部遮断されてしまっているのだろう、歩の問いかけにも答えはない。



「秋! おい、どうした? 秋!」



脱力とも硬直とも言えない体はただそこに形を成しているだけ。

絶えず聞こえるのはひゅ、ひゅ、と言う短い音。



「過呼吸?」



それまで黙って一部を見ていた女教師が先ほどと声色を変えず、歩に問う。



「知らねぇ」



本当に原因が分からないのだろう、声色に焦りが見える。

成す術が分からずただただ、秋羽の名前を呼びつつける歩。

周りの輩も秋羽の変化についていけず歩と同じように名前を呼びつつける。

それを何度も繰り返しているうちに、隣からにゅっと伸びてきた手が秋羽の頭を掴む。



「……てめ、なにする気だ」



秋羽の頭を掴んだ女教師は歩の威嚇を笑って流すと、ゆっくりと秋羽の顔へと自分を近づけた。

そして苦しそうに息を吸い続け、ひゅ、と音を出す口に自分の唇を押し当てる。







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