散らないサクラ
涙に暮れる弥生は瞳に涙をたたえながらゆっくりと、俺の顔見る(光のない目で)。
「……俺じゃあ、埋められねぇか? 少しずつでいいンだ。……お前の抜けた穴を、俺が埋めてやる。だから、俺を受け入れてくれねぇか」
俺が、いつかお前の最愛になる日まで。
お前を守り抜いてみせると約束する。
だから、……頼む、俺を見てくれ。
「……っ、……もう、や、だ」
弥生からの答えは、ノーだった。
ふるふる、と頼りなく首を横に振り、俺を見るその瞳は絶望を物語っている。
それでも縋り付くように、弥生の手が俺の服の裾を握る。
強く、何かを訴えるように。
俺は畳み掛けるように、想いを吐く。
「俺が約束する。社会的にも強くなって、必ずお前を守ると約束する、一緒にいると約束する、幸せにすると約束する……」
「…………」
「お前が望んでくれるなら、子供を作ると約束する」
「……っ……!」
いつか弥生が俺にしてくれたように、両手で弥生の両頬を包む。
あの時、俺を安心してくれた熱を今度は俺から返すように。
溢れ続ける涙の瞳は光の焦点を俺に合わせた。
ゆっくりと、ゆっくりと、何もなかったそこに色が見え始める。
弥生の震える手が動き、頬にある俺の手の甲に自分の手を重ねる。
いつもは暖かいその手は熱を失い、冷たい。
「弥生」
存在を確かめるように名前を呼ぶ。