散らないサクラ


弥生は名前に反応したのか、ぴくり、と肩を震わせると次いで――――。



力なく笑ってみせた。



儚く、脆いそれに何故か無性に泣きたくなる。



「秋」


どくん、と心臓が揺れた。

名前を呼ばれただけでこのザマだ。

もうこの女の全てに心を奪われているのだと、再認識する。

ああ、愛しい。



俺は力なく笑う弥生の唇にキスを落とし、ゆっくりと侵食するように熱を移す。

ちゅ、ちゅ、と啄むように落とすそれは深さを増し絡み合う。



「……っは、弥生……」

「………ん……っ、……」



全てを奪いたい、全てをみたい。

欲望は、いつしか願いになり、そして、約束に変わる。

キスを繰り返すままに俺は弥生の体を持ち上げ、そして部屋へと移動する。

いつも通りの弥生の甘い香りのするベッドに体を下ろし、そして俺もそれに覆いかぶさるように重なる。




「……愛してる、弥生」




愛しいと思う感情が身体に溢れる。

この感情は元はお前が俺にくれたものだ、だから、これからは俺がお前に返していく。



この熱を、お前に与えたい。





欲望と言ったら聞こえが悪いが、俺はこの日、自分の思うままに弥生を抱いた。

今までで1番満たされた夜だった。







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