散らないサクラ
欲望のまま、弥生を抱いた。
自分の熱が少しでもあいつの身体の中に残ればいいと思った。
……いや、残して欲しかった。
俺をいつでも感じて欲しいと思った。
だが、起きてぼんやりとした中で感じたのは罪悪感だった。
酔っていた弥生に了承を得ずに行為に及んだんだ、さすがに、魔が差した、だけじゃ済まないだろう、と。
しかも弱ったとこにつけこんだように。
あの夜は最高に満たされて愛だの愛されだの、考えることなく眠りにつけたが、よくよく考えたら俺はあんな堂々と弥生を守ると宣言しながら、守るどころか傷付ける行為をしていたんじゃねえのか。
考え出したらループして止まらなくなる。
だから戒めとはまた意味が違うが、区切りとしてリョウに聞いてもらいたかった。
殴るなら殴って欲しいし、怒鳴るなら怒鳴って欲しい。
俺はそれだけの事をしている。
俺は投げ出した身体を起こし、ソファにきちんと座りなおす。
真剣な眼差しに気付いたのかリョウは野菜から手を離し、キッチン台に手を付きながら俺を見た。
「……最低な事をしたと、反省してる」
「ん」
「もしもの事があったら、一生かけて責任をとるつもりでいる。つか、これから先も俺はあいつしか考えらんねえ」
「……秋、お前大人になったねぇ」
罵声が飛んでくるかと思いきや、呑気なリョウの声に硬直した体からあっという間に力が抜ける。
そんな言葉が返ってくるとは思ってなかっただけに、意図が読めず、眉を寄せる。