散らないサクラ
真相を知ろうとリョウの瞳を覗けば、緩く温かく見返された。
「お前の覚悟も十分伝わってるよ。そこまで弥生の事を思ってくれてありがとな」
でもそんな覚悟を見せてくれて悪いけど、とリョウは続ける。
「あいつ、お前とセックスした日からピル飲み始めたから」
「…………は?」
「万が一って事もあるって言ってな。……だからたぶん、その可能性ないわ」
バツ悪そうに告げられた言葉に思考が一旦停止。
それからすぐに回転し始め、言葉の意味を理解した身体の核がふつふつと湧き上がる。
沸騰に似ている感覚に、ついて出たのは罵倒だった。
「あっンの糞アマ!! なら最初から生ですりゃあ良かった!!」
誰に向かって言ってるのか分からないが、吐き出さずにはいられない。
ピル、要は避妊薬だ。
俺は端っから信用されてなかったワケだ。
信用されるほど長い期間いたわけじゃないが、それでも大事な女を抱くのにコンドームつけないほうがオカシイだろ。
そう考えてはっとする。
俺は昨日、それをしなかったンだ、と。
弥生に対してなのか、自分の不甲斐なさに対してなのか、悪態をつくように舌打ちをする。
「……まぁ、ほら、弥生の気持ちも分かってやれ」
ガシガシ、と無造作に髪を掻き毟る俺を見て、リョウが宥めるように言葉をかける。