散らないサクラ
「残りは、北町のハデス、南町のコスモス。おっと……、今はリオンか」
とりあえず、西と東は全滅、と番犬が続ける。
「クラッシャーじゃねえんだな?」
族を潰す目的為に存在する輩、クラッシャー。
だが、例えクラッシャーであっても町のトップを潰すほどデカイチームが出来る事はまずない。
しかも狙ったようにこの町の西と東だ。
目的があるとしか思えない。
「そお、クラッシャーよりタチ悪いよ。……隣町の仏(ほとけ)が動いたの」
“仏”、噂には聞いていた。
隣町の全ての暴走族を統べたチームだと。
北から西まで全てのチームを壊し、再建築したのが“仏”。
隣町の頂点に君臨する、それが仏。
それが動いた、その意味が分からないワケじゃねえ、仏が漣もエデンもやったんだ。
加速する血の流れを感じる。
「漣もエデンもそれなりに腕は立つでしょ? 特に幹部連中なんて結構ヤるのに骨折れるしね。……そんな連中が病院送りされたって。あは、ハデスの幹部は意外と慌てちゃってさぁ。俺も呼ばれて、もお大変」
大変さが微塵も伺えない声がケラケラと笑う。
こんな時でも番犬は番犬だと思わせるそれに、小さく息を漏らす。
「目的は一つだな。……ハデスとリオンを潰して、この町も吸収する」
「ん、そおゆう事だと思う。漣とエデンを潰したのは予告のつもりでもあったんじゃないかな? これから潰しに行くぞ! って言うね」
何を呑気な、と呆れるほど陽気な声に緊張しかけた空気も粉砕されていく。