散らないサクラ


中々口を開こうとしない俺に番犬が畳み掛ける。



「もうね、直球に言っちゃうと、獅子、アンタの力を借りたいの。獅子がチームを抜けたのも知ってるし、こっち側の人間じゃないから、義理も道理もないのも分かる」

「…………」

「だけど、ちょっと考えてくれない? プライドとか色々あるんだろうけど、俺たちもプライド捨てて獅子に頼みにきてるんだよね。ハデスの幹部とか苦渋の決断みたいだったし。……ま、実際此処に来てるの俺なんだけどねぇ」



空を仰いで、まいっちゃうよ、と軽口を叩いて笑う番犬から視線を外す。



本心を言えば、今すぐにでも参戦する、と言いたい。

この性格だ、気性は荒く、短期で喧嘩っ早く、口より先に手が出る。


喧嘩をするのは正直好きだ。


前はイラついてる気持ちを発散させたいが為にやっていただけだが、それを抜かしても相手をひれ伏すと言う行為には快感を感じる。

気持ちが晴れる、という方が適切か。



俺の思いを引き止めるのは弥生だ。

あいつの所為にするわけじゃねえが、弥生を思うと加勢する、とは胸を張って言えない。

上手く言えねえけど、確かにプライドとかその他色んな気持ちがごちゃごちゃに混じって、今此処で判断するのは難しい。


こんなに優柔不断じゃなかったはずだ。


情けねえ。



「……仏は、まだ仕掛けて来ねえんだな」

「ん、今んところはね。獅子も言ったように準備してるんだと思うよ」



その言葉に安堵の息を漏らし、次いで口を開く。



「すまねえが、今すぐに答えは出ない。……時間をくれ」



歩の目が見開くのと同時に、番犬の喉が鳴く。






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