散らないサクラ



俺は小さく笑う。



「……今度報告も兼ねててめえ等ンとこ、遊びに行く」



チームを抜けても、仲間だと言う事。

……今のコイツ等に教えてもらった気がする。



俺の言葉に再び輩たちが声を上げて騒ぎ立て、それを歩が宥める。

それがコスモスにいた時の情景と重なり、懐かしく感じ目を細める。

俺の気分お構いなしに輩たちが騒ぎ立て、キレそうになる俺を察知した歩が輩たちを上手く誘導していた。

何気ない日常が……、こんなにも愛おしいと思う。



いや、愛おしかったんだと思う。



ゆっくりと過去になりつつあったその情景が今ここにあると、あの頃に戻ったような錯覚を起こす。

懐かしく優しい色をしていたんだと、この時に思う。


当時は感じもしなかった……、いや感じたいとも思ってなかった優しい色だ。


お世辞にも綺麗とは言えねえ日常だったが、それでも俺にとっては退屈でも生きていた証だ。

あの頃に大切に出来なかった分、今、大事にしていこうと思う。



「総長!」

「だから、総長じゃねえって!」

「あ、すんません。うっと、秋羽さん?」

「なんで疑問系なんだよ」



唐突に発せられた声に顔を向ければ、コントのようなやり取りをする輩が目に入る。

遠慮がちに瞳が此方を見て、外し、見て、を繰り返す。

金髪に前髪に赤メッシュを入れた輩が意を決したような瞳を寄こした。



「秋さん、いま、幸せっスか!?」



その問いに周りにいた輩が息を呑み、俺の顔色を窺うように瞳だけ此方を見る。





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