散らないサクラ
赤メッシュの隣にいた茶髪の男は間髪入れず頭を叩き、焦ったように口を開く。
「ば、ばば、馬鹿!! てめっ、秋さんに何を聞いてんだよ!?」
「いや、だって、解散してからずっと気になってて。……秋さ、いや総長にこんな事言うのはおこがましいって思うんスけど」
赤メッシュの発せられる言葉に皆の神経が集中した。
もし俺の逆鱗に触れるような事を口走ったら止めようとする気が感じられる。
「総長がコスモスを解散させた事、俺はまだすっげえ悔しいっス。理由も聞いたし、一応は納得しましたけど、諦めきれねえところがあるっつうか……。だから、コスモス解散させたからには総長には幸せであって欲しいっつうか! 俺の憧れの人だから、なんかそうじゃないならますます悔しいっつうか」
「お、おい、そんぐらいに……」
「総長! いま、幸せっスか!?」
頼りなかった瞳が真摯に俺の眼球を捕えた。
その揺らがない瞳を伝って、俺の身体の中心が震えた。
しん、と静まりかえる異質な空間の中で赤メッシュに向かっていた集中が俺に移る。
誰かが唾を飲み込む音すら鮮明に聞こえ出す。
俺は腹底から湧き上がってくる感情に身を任せ、ゆっくりと口を開く。
「……お前、俺の幸せを願ってンのか?」
「っ、う、うす」
「は……、くく、くはははははははははっ」
盛大な笑い声が空間を裂く。
「あ、秋?」
「秋羽さん!?」
歩や輩たちの声が耳を抜けて行く。