散らないサクラ
「くく……、あー……、腹痛てぇ」
笑い過ぎで目尻に溜まった涙を拭う。
周りの連中や歩は目を引ん剥いて顔を凝視しているようだ。
視線が刺さる。
チームにいた頃は声を上げて笑うなんて皆無だったからこそ、驚きは大きいんだろう。
吃驚するのと同じくらい俺の言葉を待っている赤メッシュに瞳を向ける。
瞳がかち合い、赤メッシュの身体がびくりと跳ね、喉元が上下する。
俺はコスモス解散を告げた時のように、ニッと笑う。
「――――幸せだ」
誰かに幸せを願ってもらえるくらい、俺は幸せだ。
俺の未来を案じてくれる人間がいて。
俺の為を思って言葉を飲み込んでくれる人間がいて。
俺の背中を緩く、そして確実に押してくれる人間がいて。
俺に愛を教えてくれた人間がいて。
俺は、幸せもんだ。
たった20年。
でもその20年、くだらない毎日だと思っていた世界で、俺は誇りも仲間も手に入れていた。
捨てたもんじゃねえよ、俺の人生。
俺の笑みと言葉を聞いて赤メッシュは心底満足そうに頷いて満面の笑みを見せた。
「そ、スか。……良かったっス!」
「てめえ、名前は?」
「は、え、あ! 羽佐間(はざま)です」
「羽佐間、おめえの今の総長は歩だ。そこは吐き違えンじゃねえぞ。コスモスを大事に思ってくれてる事は伝わった。だが、リオンも同じように大事にしてやれ」
「……! っはい!」
歩の目が見開かれ、次いで慈しむような笑みに変わる。
気遣っていった言葉じゃないにしろ、こういう反応を返されるのも嫌じゃない。