散らないサクラ
Cherryblossoms...11



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あれから1週間の時が流れた。


文化祭も終わり(ほとんど参加しなかっただけに原沢にはすげえ怒られた)、晴天の昼下がりの休日。

漸く取り戻した平穏な日常に満足げにため息を吐く。

最上階であるから日差しは大きな窓から入り込み、俺が身体を預けているソファに程良い温度を送ってくれる。

ぼうっとしているとこのまま眠っちまいそうになる。



「秋、寝るの?」



丁度そんな時、自室から出てきた弥生に頭を撫でられればそりゃあ眠たくもなる。

だが弥生はそんなに関心もないようで一撫でするとテレビを付けた(俺は飼い猫か)。



『続いてのエンタメニュース!』



女のキャスターの甲高い声が流れ出す。



『スポーツ界のビックカップル、ついに結婚!!』

「あ、この2人ついに結婚するんだぁ。ほぉ、めでたいねぇ」



弥生の声にテレビを見れば、オリンピックでも活躍する選手が結婚するようだ。



『穂波(ほなみ)選手と言えば陸上競技、対する川上(かわかみ)選手は水泳競技。混じり合う事のない陸と水が結ばれるなんてちょっとロマンチックですね』

『そうですね、では早速、記者会見をご覧ください』



乱れるフラッシュの中で映し出されたのは2人の男女。

上に出ているトピックを見れば、穂波陸嵩(ほなみりくたか)選手、川上蒼乃(かわかみあおの)選手、結婚記者会見、と書かれている。

実際に競技を見た事はないが、名前だけは知っている。


陸上選手と、水泳選手、それだけしか知識はない。



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