散らないサクラ


「俺が今ここにいれるのはお前のお陰だと……、心の底から思ってる」



嘘偽りない本当の気持ちだ。

自分がここに立っている事も、歩やチームの輩の大事さ、誇りを知れたのも。

全て、アンタのお陰だ。



俺はソファの腰をかけたまま頭を下げる。



「糞餓鬼な俺に居場所をくれて……、感謝してる」



弥生の顔がどんな風に変化したのかは知らない。

頭をさげたまま、だから、と繋げる。



「お前に返したい。そんなのいらねえ、って言われるかもしれないけど。お前に与えてもらった分、返したい」

「秋、顔上げて」

「…………」



弥生の平坦な声が心臓を差した。

言葉のままに顔を上げれば、呆れたようなそれでいて、何処か慈しむような顔をしていた。



「感謝してもらうためにしてたわけじゃないよ。でも、アンタのその気持ちは受け取った。……餓鬼が大人になるのは早いって言うけど、本当だな」



感慨深そうに頷いた弥生が面白くて笑えば、同じように弥生も笑う。

この瞬間が大事で、この先もこうしていたいと思う。

一生一緒にいたいなんて、嘘くさい言葉だと思っていたが、その言葉が今はしっくりくる。


目を細める弥生を見つめて口を開く。



「二度目だけど、もっかい言わせてくれ」



心臓に妙に静かな風が凪いだ。

それが感情の琴線に触れ、根底にある俺自身が顔を上げた。




< 202 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop