散らないサクラ
「俺が今ここにいれるのはお前のお陰だと……、心の底から思ってる」
嘘偽りない本当の気持ちだ。
自分がここに立っている事も、歩やチームの輩の大事さ、誇りを知れたのも。
全て、アンタのお陰だ。
俺はソファの腰をかけたまま頭を下げる。
「糞餓鬼な俺に居場所をくれて……、感謝してる」
弥生の顔がどんな風に変化したのかは知らない。
頭をさげたまま、だから、と繋げる。
「お前に返したい。そんなのいらねえ、って言われるかもしれないけど。お前に与えてもらった分、返したい」
「秋、顔上げて」
「…………」
弥生の平坦な声が心臓を差した。
言葉のままに顔を上げれば、呆れたようなそれでいて、何処か慈しむような顔をしていた。
「感謝してもらうためにしてたわけじゃないよ。でも、アンタのその気持ちは受け取った。……餓鬼が大人になるのは早いって言うけど、本当だな」
感慨深そうに頷いた弥生が面白くて笑えば、同じように弥生も笑う。
この瞬間が大事で、この先もこうしていたいと思う。
一生一緒にいたいなんて、嘘くさい言葉だと思っていたが、その言葉が今はしっくりくる。
目を細める弥生を見つめて口を開く。
「二度目だけど、もっかい言わせてくれ」
心臓に妙に静かな風が凪いだ。
それが感情の琴線に触れ、根底にある俺自身が顔を上げた。