散らないサクラ


だが、弥生と出会い、リョウや原沢に背中を押され、歩の優しさに触れ、チームの仲間に幸せを願われ。

俺の中で静かに起こっていた変革が、確立した。



「……俺は、ずっとお前の男に勝ちたかった。死んだ男より、俺を見て欲しかった、弥生の今の“最愛の人間”になりたかったンだ」



弥生の頬へそっと手を伸ばす。

温い体温が手の平から体中に広がって行く。



「だけど、色んな人間と出会って考えたンだ。キャパシティが超えるほど、な」



ふ、と苦い笑いを漏らす。



「お前を愛してる気持ちは今も何一つ変わっちゃいねえ。今でも弥生、お前を好きだ、愛している」



恥ずかしげもなく口から出る言葉に、迷いはない。

こんな俺を覚醒させたのも、弥生、てめえだ。

自分さえ知らなかった自分を、いくつも、いくつも、発見した(その度鳥肌モンだが)。

変化を繰り返し、その度迷い、立ち止まり、壁にぶつかり、人の暖かさを知り。

俺の中で起きた変革は確かに成長の証で。



息を吸って吐く。



「だから、俺はお前が愛している旦那ごと、アンタを愛そうと思う」

「っ!」



触れている頬が熱を発すると共に、弥生の瞳が驚愕に開かれる。

その瞳を逸らさず見つめ、そして口角を上げ微笑む。



「旦那を忘れないままでいい、愛したままでいい。……それを含めて、俺はアンタを愛すよ」



俺の出した答えだ。





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