散らないサクラ
嫉妬もした、落胆もした。
越えられないデカイ壁を目の前に、何度も何度も立ち止まり、背を向けそうになってはもう一度向き合い。
――――『……姉さんを幸せにしてくれる?』
――――『秋羽は直球勝負しか出来ないんだからさ、当たって当たって、砕ければいいんだよ』
――――『焦んな。焦る気持ちは分かるが、大事な事が見えなくなる』
――――『長年ダチやってけど、今のお前、すっげーいいと思う』
色んな言葉が心で反響して、跳ねっ返って。
何度も何度も、俺を奮い立たせてくれた。
その中で、辿りついだんだ。
弥生、アンタの旦那へ対する思いも含め、アンタはアンタだ。
それを否定したらそれは弥生じゃねえ。
だから、俺はアンタのその想いごと、愛する事を決めたんだ。
ぐしゃり、と弥生の顔が歪む。
「アンタの想いを否定しない。だから、俺の想いも否定しないでくれ。そンで、餓鬼みてぇにいつまでも笑っててくれ」
今にも崩れそうな弥生を引き寄せ、抱きしめる。
抵抗されずに体にすっぽり収まった体は、弥生が女なんだと感じさせる。
肩口に乗った頭を優しく撫でる。
それに応えるかのように、弥生の腕が首元に巻き付く。
柔く、丁度いい力加減が心地いい。
暫く経って、弥生がゆっくりと体を離し、対面する。
「……いい男になったじゃん、秋」
ニッ、と餓鬼みたいに歯を出して笑う弥生に安心して、息を吐く。