散らないサクラ
「竜を愛し続ける自分と、秋を好きになる自分の矛盾にどうしようもなくなってた。だけど、秋、アンタ言ってくれたでしょう?」
――――『俺が約束する。社会的にも強くなって、必ずお前を守ると約束する、一緒にいると約束する、幸せにすると約束する……』
――――『お前が望んでくれるなら、子供を作ると約束する』
「女としての願望を全部約束してくれるって。……欲しかった、その言葉。今更だけど、すごい嬉しかったよ、秋」
笑いながら、溢れる涙はいったい何を意味しているのか。
まだ混乱する頭では上手く答えを導き出せない。
だが、一つ分かっている事、それは……、
――――弥生が俺を好きだと言ったコト。
心臓が小刻みに震えだし、現実感のない体に現実なんだと思い知らせる。
ごくり、と喉仏が上下し、溜まった唾液を飲み干した。
「……ンで、お前、俺を……」
衝撃のあまりカタコトになる言葉に弥生が涙を拭いながら笑う。
「竜を愛したあたしのままでいいって言ってくれたでしょう? 凄く驚いたよ、その考え。あははっ! だって、違う男を愛してるのにそれでもいいって言ってるんだよ? あたしは竜を愛し続ける、一生死ぬまで。……それを許してくれるいい男、これから現れないだろうね」
「……アンタ、……俺の事……」
「好きだよ。多分、これからもっと好きになる。大好きになるよ」
――――好きだよ。
ああ、もう夢じゃねえ事だけを祈る。
俺は力任せに弥生の腕を引っ張り、抱きとめる。
この余裕のなさを笑ってもらっても構わねえ。