散らないサクラ
一番欲しかったんだ、ずっとアンタに告白してからずっと。
一方通行でいいと言ったのに、欲望は広がり、愛情を求めるようになり。
それが叶わないのだと挫折して、そして立ち上がって、ぶつかって。
色んな道に迷って、色んな人間に道を指し示してもらって、アンタがいま、それを確かなものに導いた。
たった一言、その一言が。
何よりも、俺が求めていたモノ。
抱きしめた力を更に強める。
押しつぶさない様にしなきゃいけねえと思いつつ、反して体はいう事を利かない。
弥生の腕が背中に周り、その温い手が金髪を梳く。
優しいそれに感情は溢れる。
「辛かったよね、秋羽。ごめんね」
「……、いい。もう、いい」
欲しかったモンが、手に入った。
焦がれた気持ちも、苦しいほどの嫉妬心も、何もかも溶けていく。
「もっかい、もっかい言ってくれ、弥生」
正常に戻りつつある心拍数を感じ、俺はゆっくりと弥生の体を解放する。
向き合ったその瞳には恐れていた闇も、悲しみもなく、暖かな優しさを放っている。
赤くなった目を細め、いつもみたく歯を出して笑う愛しい姿。
「――――秋羽、好きだよ」
「俺も、……俺もお前が好きだ」
引力に逆らうことなく、唇を寄せ合った。
いままでした中で一番甘い感情が広がり、これが“キスの味”か、なんて思った。
苦しい気持ちとは違う、ぎゅっと締め付ける苦しさに戸惑いながら。
俺たちは何度も、何度もキスをした。
ああ、俺は、幸せを手に入れた。