散らないサクラ


俺はソファに座り直し腕を組み、唸る。



「半分以下、か」

「ハデスの幹部とウチの幹部たちで、他のチームにも声かけてるけど、参戦してくれるかどうかは五分五分な所だね」

「数は仏の上手だとしても、戦力じゃあ負けてねえんだろ?」



それを聞いて番犬がニヤリ、と口角を上げる。



「そう。情報が全てだとは言わない。だけど仏は数が多いけど、ひとりひとりの戦力は弱い。その点、ウチはひとりひとりの戦力が高い。しかも戦略を練れば、勝機は確実にある」



ぞわり、と血の巡りが高まる。


脳内で繰り広げられる喧嘩のシミュレーションに体が反応し、拳が唸る。

弥生になるべく怪我をしないなんて言っときながら、骨の一本や二本折れた所でやめねえと断言できる。


ああ、ダメだな、俺。


心の中で自嘲するが、この喧嘩を楽しみにしている自分がいる。



煮えたぎる血の巡りを感じるが、今は冷静な判断を求められる時だ。



「……仏の戦力外はいい、戦力陣のデータが欲しい。うちにも優秀な情報屋がいる、そいつにデータを送ってくれ。分析力で右に出るモンはいねえと思ってる。そいつに分析させて更に詳しいデータを作る。それをハデス、ケルベロスに回す。話はそれからだ。相手を知って戦略を練る。……じゃねえか、俺本意で動けねえからな、今回は」



仕方ねえ、今回は共同戦線だ。



「とりあえず俺の案だっつってハデスに掛け合ってくれ」

「了解だよ。たぶん上の幹部連中もオッケーだすと思うけどね。確かに、獅子ンとこの情報屋の分析は凄いからね。……ああ、懐かしいなぁ、何回かそれで痛い目みたもんねぇ」



番犬の懐かしむ声に、昔話に花が咲き、暫くの間その話に盛り上がった。

それから今回の話し合いの報告をしに番犬が腰を上げ、皮肉混じりの冗談を言って部屋を出た。





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