散らないサクラ



確かにアンタが俺を刺したのも事実。

そしてこの呪いのような赤色を残したもの事実。



でもそれと同時に、アンタの愛を深く感じるようになったンだ。



『秋羽』



そう呼んでくれる声も。



『凄いわ、満点! ふふ、秋羽はやっぱりお母さんとお父さんの子ね』



そう笑ってくれる顔も。

アンタから憎しみの感情は一つも感じなかった。

間違いなく貰ったものは愛情だ。

親が子を思う、純粋なものだった。





赤色が、目の前を飲む。

その中に母さんの幻影をみたきがして、俺は頼りなく震える口を開く。




「……母、さん。おれ、はアンタの、子供で……、よかったと思う」



幻影の彼女が小さく目を見開く。



「きっと、この赤色は……、血は……、俺の、罪悪感が生み出したもンだ。俺の弱い、心が、母さんを失った、衝撃と、親父への憎しみで、耐え切れなかったから」



生前のまま、美しい姿の母さんは小さく悲しい笑みを携えると、ゆっくりと此方へ手を伸ばす。



「でも、もう平気だ。……アンタの愛も、……タブン、親父の愛情も、きっと形は違っても同じモンだ」



いつか、ちゃんと親父とも話をしてみようと思う。

あいつにも守られていたんだと、今の俺なら分かるから。





< 220 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop