散らないサクラ
確かにアンタが俺を刺したのも事実。
そしてこの呪いのような赤色を残したもの事実。
でもそれと同時に、アンタの愛を深く感じるようになったンだ。
『秋羽』
そう呼んでくれる声も。
『凄いわ、満点! ふふ、秋羽はやっぱりお母さんとお父さんの子ね』
そう笑ってくれる顔も。
アンタから憎しみの感情は一つも感じなかった。
間違いなく貰ったものは愛情だ。
親が子を思う、純粋なものだった。
赤色が、目の前を飲む。
その中に母さんの幻影をみたきがして、俺は頼りなく震える口を開く。
「……母、さん。おれ、はアンタの、子供で……、よかったと思う」
幻影の彼女が小さく目を見開く。
「きっと、この赤色は……、血は……、俺の、罪悪感が生み出したもンだ。俺の弱い、心が、母さんを失った、衝撃と、親父への憎しみで、耐え切れなかったから」
生前のまま、美しい姿の母さんは小さく悲しい笑みを携えると、ゆっくりと此方へ手を伸ばす。
「でも、もう平気だ。……アンタの愛も、……タブン、親父の愛情も、きっと形は違っても同じモンだ」
いつか、ちゃんと親父とも話をしてみようと思う。
あいつにも守られていたんだと、今の俺なら分かるから。