散らないサクラ
「はっ、人間変われれば変わるもんだな。……今じゃてめぇは腐ってる連中の仲間入り、んで幹部かよ」
「はは、本当にお笑い種ですよね。でも、昔の自分より今の自分のほうがずっと好きです。……感謝なんかされて困るのは秋さんだと思うんですけど、俺の中で革命を起こすきっかけをくれたのは貴方だから。……コスモスの再会と決別に言わせて下さい」
漆黒の瞳が一瞬揺らめきを見せ、そして意思を持つそれが俺を射抜く。
「秋さんの事だからあの時、気まぐれで俺に声をかけてくれたのかも知れない。……だけど、俺に仲間をくれて、居場所をくれて、“ありがとうございます”」
芯の篭った瞳が、熱を持った意思が、本物の思いを伝える。
ああ、まただ。
俺の方が“ありがとう”だろうが。
誰も彼も簡単に俺が口に出来ねえ感謝の言葉を、軽々と使いやがって。
感謝の言葉を上手く消化しきれずに、笹切から目を逸らす。
「馬鹿が、困らせンの分かってンなら言うな」
「だから俺、感傷に浸ってるんですって。……こうやって秋さんと話したかったし、最後のチャンスかなって」
他の幹部も皆思ってますよ、とまるで他の幹部とも話してやれと誘導されてる気分になる。
ったく、策士だよ、てめえは。
大きくため息を吐く。
「……自分で言うのもアレだが、俺の何処についていこうと思ったンだよ。ただの暴力を振りかざして己の事しか考えてねえ餓鬼だったろ」
バツ悪く逸した目を笹切に向ける。
普段は眼鏡をかけているが、喧嘩の時だけコンタクトになる笹切の表情が考えるように歪む。
輩たちが俺を慕ってくれる気持ち、俺の将来を案じてくれる気持ち。
どれもがお笑いもんで、そして暖かい色を持ってる。