散らないサクラ
周りを見渡せば、馴染みのある光景。
こうやって朝も夜も関係なく過ごしてきた、俺の仲間たちだ。
これで最後になろうとも、これまで過ごした時間に代わりはない。
胸に今、その思いを詰め詰め込み、派手に暴れまわってやる。
――――ドルゥン、ドルゥン!
響く、バイクのエンジン音。
指定されていた廃墟の駐車場に、群がる男たちの数。
次から次へと群れをなす、―――――仏。
「おー、ついにご登場だな」
歩が口笛と共に軽口を叩き、その横にいる番犬の目と口角が楽しそうに上がる。
バイク音を聞きつけた“ハデス”、“ケルベロス”、“コスモス”が集まり、各々方、戦場にとやってきた敵に視線を集中させる。
途端に流れる緊張の空気。
この人数だ、抑えきれない殺気や興奮が一斉に広まり、体のどこかを動かしていねえと固まっちまいそうになる。
どちらが優勢か、見えてこない勝負の行く末が緊張を煽る。
「……へぇ、意外と数集めたじゃねえか」
群れを成す仏の中の一人、スキンヘッドの男が声をあげる。
「どぉも、仏でーす」
その横にいる、見るからに軽そうな男が片手を上げてへらり、と笑う。
どこか誰かを思わすそれに、チラリと視線を向けると、それに気づいた番犬が同じようにへらり、と笑みを貼る。
「なぁんか、同族嫌悪って感じ?」
「はっ、安心しろ。あっちのほうがイケメンだ」
「わ、獅子って容赦ないね。こう言う時は“お前のほうがイケメンだ”って言う所だよねぇ。……あーあ、やる気なくすなぁ」
そうは言うが、番犬の瞳の奥は喧嘩を純粋に楽しみたいと言う、狂気の色を見せる。
“番犬”の顔、だ。