散らないサクラ
「なぁなぁ、お前らから仕掛けてこねえなら俺らから行っちゃっていいわけぇ?」
次から次へと声をあげる、仏の群れたち。
確かに統一性が皆無だ。
それぞれが濃い色をしている事は確かなんだろうが、無計画で来てる事が薄らと分かる。
「ぷっ、腰抜けどもを相手にする俺らってカワイソなんじゃね?」
「所詮は名ばかりってか? ぎゃはは、“冥界の門番”とその“番犬”、あと……なんだっけ? 花の名前のチームだよなぁ?」
「どうでもいいだろぉ、んなの! 名前なんて今日でなくなるんだからよ」
わざと聞こえるように声を張る仏の輩たちに、それぞれのチームが反応する。
直接肌に感じる、確かな殺意。
幹部連中がこんな挑発に乗るわけがねえ、まんまと挑発に乗ったのは下っ端どもだ。
計画性がないってのも厄介だ。
「ま、引導ってやつを渡してやるよ」
ブチッ、何処かで毛細血管の切れる音が聞こえた。
流石に堪えきれなかったのか、味方側の輩の一人が声を上げる。
「いい気になってんじゃねえぞ、糞共ォ!! てめえらがこっちの町にのさばるなんて、んな胸糞悪い事させねえ」
その声をきっかけに、殺意が熱気となって蔓延する。
一気に広がるそれに輩たちは口々に声を上げ、ヒートアップしたそれは音だけに定まらず体まで動かせる。
もうどちらが最初に動いたなんてもんは分かんねえ。
一斉に塊が動き出す。
「うぉおぉおおぉおおおお!」
「ちっ、腹括るしかねえなぁ!!」
「がっ、……ぐは……、っち。やりやがったな」
ここまででかい規模は初めてなだけに、動き出した熱量は圧巻だった。
陣地から敵陣に攻め入っていく仲間たちの背中を見送りながら、指の骨を鳴らす。