散らないサクラ
* * * *
吐き出す息が鮮明に脳内で反響する。
湧き出る血の流れすら感じ取れるんじゃないかと思うくらいの心の静寂と、冷静で尚且つ興奮する感情。
拳が真っ赤に染まる。
「――――がァっ、う、ぐぁ!」
目の前に倒れこむ名前も知らねえ、仏の奴ら。
「ひっ、……も、も、やめっ」
逃げ惑う姿。
何度も、何度も見てきた。
何度も、何度もこの感覚を経験して来た。
一心不乱に心の平穏を求め、時間から、赤色から逃げ続けた過去。
虚しくも俺の一部として生きている、過去。
「――――逃げんなよ、これからだろ」
にたり、卑しく笑う。
「ちょ、おい! 下手に手ぇだすんじゃねえ! ……こいつ、血塗りの獅子だ!!」
周りを取り囲んでいる仏の一人が声を張る。
さほど大きい声でなかっただろうが“血塗りの獅子”の名に、どよめきが起こる。
「っまさか……、こいつが」
「いや、血塗りの獅子ならこの強さに頷ける」
喉仏がごくり、と唾を飲み込み上下する様を嘲笑う。