散らないサクラ
「赤く染まりたい奴らから出てこいよ」
相手の顔面を血で真っ赤に染め上げる事からついた名に、今は堂々と胸を張れる。
恥ずかしい名前だとは自負してるが、それでもそれこそが“コスモス”にいた証。
俺の生きた証なんだと感じる事が出来る。
「来ねぇのか? ……腰ぬけどもが勢ぞろいだな」
挑発するように鼻で笑ってやれば、まんまと引っかかる仏の輩。
噛み付く駄犬の様に向かってきた仏たちを避け、腹に、顎に、頬に次々に拳を振るう。
無様な声を上げ、倒れこむ輩たちを見下し、その間にも襲ってくる奴らを足で一掃する。
「ぐっ、あぁっ!」
雑魚と言っても過言ではない輩は、見事に地面にひれ伏す。
本能が叫ぶ。
足りない、こんなんじゃ足りない。
もっと刺激が欲しい。
貪欲なその感情に自分自身呆れもしたが、久々の興奮を止めたくもなかった。
倒れ込んで咽る輩たちに背を向けて、本能が叫ぶまま走り出す。
「総長!」
走り出した後ろから呼ばれ、振り向くとコスモスの幹部の一人、近藤が血相を抱えて走ってきていた。
止まっている余裕はこっちもない。
走るスピードを少々落としながら答える。
「なんだ」
「前川と渡辺がヤられました」
ぴくり、と眉が動く。
前川と渡辺も近藤と同じく幹部達だ。
腕の立つ奴らなのは百も承知だ。
「場所は?」
「向こうっす! 相手は仏の戦力達で間違いないです! ……相当、強いです」
熱意を秘め、尚且つ強者と対面した時の恐怖が近藤の瞳から伺える。