散らないサクラ


「奥歯歪んだぞ糞が」

「それぐらいの方が丁度いいんじゃない?」

「はっ、言ってろ」



吐き捨てるようにして言えば、目の前の顔が先程とは一転する。

憎悪の塊を表す鋭い眼光を此方に向ける。

途端に変わる空気。

冷たく、怒気を隠すことなく向けてくる。



「なぁ、知ってる? なんで隣町を潰してでかい組織を作ったのか?」

「興味ねえ」

「……ちっ、態度がいちいちうぜえな。教えてやるから聞けよ」

「…………」



“んなもん聞いて得はねぇ”と悪態をつこうとして、やめる。

仏の手の平に握られた銀色の刃物が見えたからだ。

逆上されて不意を突かれたら対処しきれねえ。

沈黙を守る。



「この町のチームは強い。俺たちがいる町に比べたら格段に差がある。……1つのチームが団結して戦っても勝てる見込みはゼロ」



分かるでしょ、と瞳が問う。



「挑んでもボロ負けして帰ってくる。……ああ、覚えてなんかいねえだろうな、弱い奴らの事なんて。俺の弟、アンタに挑んで内蔵破裂。未だに病院のベッドの上だよ」



心臓がゆっくりと、大きく跳ねた。



「他の奴らもそうだよ。ハデスやケルベロスに仲間をやられ、恨みを持ってる。……だから、決めた。アンタらに勝つ強いチーム、デカイデカイチームを作るってね」

「それがこれ、仏か」

「そう。理由があって仏がいるんだよ」

「理由があるからって何でもしていいのか。理由を出しに自分たちがしている事を正当化してんじゃねえよ」



同じ事を繰り返せば、同じようにそれが続く。

永遠に終わらない負の連鎖の中に閉じこもるだけだ。

抜け出すには激的な事がない限り難しい。


それは身を持って体験した。



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