散らないサクラ
恨みを訴える仏の瞳を逸らすことなく見れば、奴の表情が崩れた。
唇が震え、眼光は先程から更に強く光る。
輩の顔を伺いながら、手に握られた刃物に意識を向ける。
「てめえがンな事言える立場じゃねえだろうがァ!! 喧嘩が強ければ、相手の内蔵を破裂させていいンかよ、アァ!? キレイゴト言ってンじゃねえぞ、糞が!!!」
――――来る。
昔からの癖だ。
相手を落ち着かせる言葉より、逆上させちまう言葉を吐くことの方が長けている。
短く舌打ちをし、刃物を向けながら向かってくる塊を避ける。
「糞がっ、ちっ! てめえにも弟と同じ思いを味あわせてやりてえ、って思いながらっ、今日までっ、ずっとっ! 生きて、っきた!」
刃物が空を切る。
ひゅ、ひゅ、と風を切る音が間近に聞こえる。
刃物ばかりに集中しないように、仏の足、腕、全てに視線を当てる。
だが、全てに目を向けるのは限界がある。
銀色の先端を避け、次の行動を予測して動くがそれが外れる。
「―――がっ、ぐ……はっア」
腹に刃物を持っていない手が食い込む。
びゃちゃ、と腹から湧き上がった液体が地面に落ちる。
よろめきながらも、眼球を仏に向け、距離を取る。
渾身の一撃だったようだ。
衝撃がデカイ。
「……は、はっ、はぁ……ちっ」
「こんなモンじゃねえ、あいつが与えられた苦痛はこんなモンじゃねえ!!」
血走る瞳が“敵”(俺)を見る。