散らないサクラ


体をゆっくりと、離し、どちらともに戦意が無いことを確認する。

辛うじて握っているのであろう、凶器に手を伸ばせば、あっさりとそれを手放した。



「……ンで」



揺らぐ視線が地面を這う。

仏の不安定な思いを代弁しているかのようだ。



「お前、そんなんじゃないでしょ。……なんなんだよ、やりづれえよ」



はは、と乾いた笑いを残し、仏は空を仰いだ。



「血塗りの獅子が、丸くなりやがって。……あの頃のお前、何処いったんだよ。血塗りの獅子はもっと、もっと……」

「獅堂秋羽」

「……は?」

「名前だ、獅堂秋羽」



名前を繰り返す。

仏は異質な存在を見るように、不審に眉を寄せる。



「ンな、卑怯な刃物使わなくたって、普通に戦えンだろ。仏とコスモスじゃなく、お前と、俺として決着付けようぜ」



組織として、じゃなくて。

今、此処に存在している個人として。

男として、守るものを掛けて。



それが、俺の責任の取り方だと、そう思うから。



「なにそれ、もう血塗りの獅子じゃないって言いたいワケ?」

「そうじゃねえ。その異名を含めて俺は俺だ。……ただ、お前と正々堂々戦いてえなぁ、って血が疼いただけだ」



そう言ってニヤリ、と笑うと仏は目を瞠った。




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