散らないサクラ


佐倉は俺の顔をまるで愛しい子を思うように見つめた。



「そっか。秋羽はあたしと似てるんだね」

「は?」



佐倉は重たい話に似つかない顔をして笑った後、俺の髪の毛を撫でた。

それを振り払う前に手を退かれる(無駄に動きが速い)。



「ま、今はそうでもないんだけどさ。昔、あたしも父親のこと、殺したいほど大嫌いだったし。だけど、お母さんの事は大好きだったんだよね」



こいつは俺の話を聞いていたのか?

いつ、だれが、母親を好きだと発言した。


与えられた不快感に眉を寄せて佐倉を見ると、不機嫌な意図が見えたのだろう、苦笑する。



「アンタ睨むと迫力あるよね」

「てめ」

「だって秋羽、アンタ、親父の事は悪く言っても母親の事、一度も悪く言わなかったでしょう?」



どん、と心臓を何かで突かれたような衝撃。


これをどう表現していいのか分からねえけど、たぶん驚いたのだと思う。



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