散らないサクラ
「……弟の了解を得てからじゃ分かんないから、なんとも言えないけど。俺は見舞いに来て欲しいと思ってる」
「……大山」
「今の獅堂、悪くないと思うから」
そう言って痛々しい顔で微笑んだ大山からは、初めにあった危うい色は消え去っていた。
* * * *
動けない大山を後に、再び戦場へと走り出す。
苦戦しているかのようだが、笹切が合流し、情報が回るにつれ、勝機の色が見え始める。
笹切の考案した連携は見事に成果を上げていた。
普段は敵同士、連携を取る事など皆無だが、こうして協力しあってみれば相性が悪くないことが判明する。
今日限りが惜しいと思うくらい、見事に仏を散らしていく。
「……ぜぇ、はっ、……ぐっ……はぁ」
喉元から絞る息が出る。
勝機が見えたからと言っても相手も強敵。
そう簡単には倒されてはくれない。
「は、はっ、ひゅぅ、ひゅ、……っ、は。獅子ィ、はっ、へばってんのぉ? だっさぁ」
「……はっ、……ぜ、はっ……、てめぇも、息、変な漏れ方、ぜぇ、してんぞ」
いつの間にか背中を預けながら戦う形になっていた番犬が、茶々を入れる。
「肺にさっき一発、……ひゅ、はっ、は、入ったんだよねぇ……、あはっ、早くあいつ、はっ、落ない、か、なぁ」
「はっ、ぜぇぜぇ……、俺は、はぁ、あばら2本イった」
「可哀想だね。……っと、来るよー」
間延びした言い方に緊張感はゼロ。
それに舌打ちをしながら此方に向かってくる仏に応戦する。