散らないサクラ

危機的状態に追い込まれてもなお、屈することの出来ないこの気持ち。

殴り、殴り返し、血を流し、流され。

傍から見ればなんて無様で、実のない事をしているんだと思われるんだろう。

だが、俺たちからしたら心の拠り所で、存在意義で、帰る場所。



それを守る事が、俺の、コスモスの最後の使命。

今やっとそれが分かる気がする。



「……ガッ、アァ!」



目の間の顔が憎しみに歪み、そしてそのまま後ろへ倒れこむ。

腹に膝蹴りを食い込まされた男は口から大量に血を吐き出すと、白目を剥きながら気を失ったようだった。



「はっ、……つっ……。いてぇ、……あー……」



脱力する体は頼りなく揺れ、地面に腰を下ろす。

軋むあばら骨が悲鳴を上げる。



「あー……」



低く唸る。

鉄臭い口内、赤に染まる拳。

不快に思うはずのそれに、今まで喧嘩後に感じた事のない爽快感を覚える。

一瞬トチ狂ったかとも思ったが、理由はあちらこちらに散らばっている。



痛々しい傷を追いながらも、勝利を納めた仲間たちの姿。

中には病院送りの奴らもいるんだろう。

だが、見る限りみな清々しい顔をしている。

静かにそして優しく、心に風が凪ぐ。


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