散らないサクラ
腹部に、激痛と、そして次いで広がっていく、煮えたぎるような、熱。
短く息を吐きながら視線だけ下に逸らせば、にたり、と笑う銀色の凶器。
血を吸う、化物。
「あ、ぁ……あぁ……っ!」
凶器を手に握り締めながら、仏はフルフルと震えだす。
自分で刺しておきながら大量に流れ出る血に、混乱し始めたのだろう。
「……糞、が……」
「あ、あぁ……ちがう、俺は、俺、は」
震える振動で腹に刺さっている凶器が振動し、肉が動く。
ぽたぽた、血が流れるスピードを早めている。
やばい、こいつこのままじゃ……!
「お、ちつけ……、おい、……俺は、平気、だ……っ!?」
「あ、ぁああああ!!」
「ハッ、グァ……アァ……ッ!!」
―――――ブシュッ、ブチュゥ!
刺さったナイフが勢い良く抜かれる。
カランカラン、と地面に落ちた凶器が乾いた音を響かせる。
ナイフによって多少なりとも血が外に出るのを抑えていたそこは、蓋をするものがなくなり今度こそ大量に血を噴射する。
ぼたぼたぼた、赤い色が地面を濡らす。
凄まじいほどの激痛が体中を流れ走った。
額から一筋の汗が流れ落ち、世界が反転する。
「つっ、……は、……ぁ……っ、あ」
足から崩れ落ち、支えのない体は地面へと全てを投げ打った。
感覚が鈍っているのか、硬いはずのコンクリートの感触もはっきりしない。