散らないサクラ
大丈夫だ、頼むからそんな顔しないでくれ。
無事で帰ってくるって約束しておきながら、こんな無様な姿晒しちまって悪かった。
だけど、お前にはいつまでも餓鬼の様に笑ってて欲しいんだ。
だから、泣くな。
泣くなよ。
弥生の口が動き、その形が俺の名前を形取る。
アキハ、あきは、秋羽。
ああ、俺の名前だ。
音が聞こえないのに、脳内に響いいてくる愛しい声に、ふんわりと、優しい笑みが溢れる。
「や、よい」
心配しないでくれ、必ず約束は守る。
幸せにするって約束する。
だから、だから笑ってくれよ。
なぁ、弥生。
「――――あい、してる」
眉を寄せながらも、笑みを携えた弥生を最後。
ゆったりとした時間の中で、俺は静かに赤色に飲み込まれていった。