散らないサクラ
黙ってしまったこの部屋に静寂が訪れる。
その沈黙を破ったのはやけに優しい佐倉の声だった。
「秋羽さえ良ければ、腹の傷、見せてくれない?」
言葉に眉を寄せる。
脳みそがイカレてるんじゃないかと、佐倉を睨みつけるが、それに怯むことない瞳がじっとこっちを見続けている。
「アンタ、傷を見て喜ぶ趣味があんのか」
「ないよ」
くすり、と零した笑みが俺の心を揺らす。
女とこうやってまともに会話したのなんてどれくらいぶりなのだろう、と考えた。
下世話な話、ベッドで性欲処理が出来れば女なんてそれでいいと思う。
今でもそれは変わらない。
だが、そんな女と変わらない女が目の前にいるのに、俺はその女どもに抱かない感情を目の前にいる佐倉に抱いている。
この胸にある小さな感情が分からず、振り払おうとして布団から這い出る。
そして地面に足を着くと、着てた服を捲りあげ、腹部を佐倉の前に晒す。