散らないサクラ


継いで貰えたら、と思った事は確かにあった。

だが秋羽の素行や気持ちを考えれば、簡単に継ぐ事は出来ないと諦めていたのだ。

獅堂グループは他にも優秀な人材がいる。

そんな人間に任せるのが適任だと、そう思っていた矢先だった。



『電話越しじゃ、俺もしっくりこねえから。今度、直接会いに行く。その時は……、礼の言葉を言わせてくれ』



そう言って照れた様に咳払いした息子に、和葉は悟られぬように涙したのだった。

和葉は弥生の涙で濡れる瞳を一心に見つめた。

そして唇を結い、眉を上げ、“医者”の顔になる。



「必ず、助けます」



真摯にぶつかるその言葉に、弥生心臓からぶわり、と感情がこみ上げる。



「私の為に、そして貴女の為に、秋羽を慕う全ての人の為に。そして何より秋羽の為に」

「…………っ」

「大丈夫です、信じて下さい。必ず秋羽の未来を繋ぎます」

「――――はい」



医者として、父として。

その強き意思を感じた弥生は、強く、強く、頷いたのだった。




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