散らないサクラ
時間は取り巻く環境を変え、人を変える。
リオンの連中は上手く自分の足で未来を歩いて行っている。
歩は実家の整備士を継いで、去年結婚。
笹切は大学を卒業してすぐに起業を設立。
近藤と渡辺も笹切の立ち上げた会社に就職。
他の奴らも四苦八苦しながらも社会と言う波に乗っている。
ハデスやケルベロスの奴らは知らないが、ま、なんとかしてるんだろう。
番犬は今じゃ飲み友達。
今、付き合ってる女の実家の花屋を継ぐ気でいるとか。
『まこちゃんのおうち、母子家庭でさ。この前、お母さん倒れちゃって、俺が臨時で入ったんだけどこれまた楽しくてね。花屋さんでもいっかなぁって』
へら、っといつもみたく笑ってみせた番犬の顔が何処か覚悟を匂わせて。
黙ってその話を聞いていた。
現在は脱サラしてその花屋で働いている、毎日彼女に会えて幸せだと、曇りのない笑顔を今度はみせる。
それが真実なんだろう。
あ、それと原沢柑奈。
なんとあいつは留学してきたどっかの国の王子に見初められ結婚だと。
俺の中ではかなりのビックニュース。
……時は変化を生む。
奴らと同じように俺も変化して、漸く弥生に約束を果たせる男になったと、そう思っていた矢先の話だった。
――――『あ、秋、あたし、子供出来たみたい』
あんな簡単な報告に抱えていた抱負や意気込みをぶっ壊された気分になるなんて。
笑わせる。