散らないサクラ
迷いなんてのは一切ない、断言できる。
ただ消化しきれない感情共がうねりを上げ、焦燥感を煽っている。
何から始めればいい?
何から動けばいい?
その答えがゆっくりと輪郭を表す。
格好良く決める所を先越されて、おめおめと尻尾巻いただけの獅子にはならねえ。
……なあ、そうだろ。
「っさけねえな。……お前らに背中押されるなんてな」
カウンターに置かれたショットを煽り、ガリガリと黒髪を掻く。
「ははっ、頼ってくれよ。昔はお前に頼ってばっかだったけどよ、俺も今なら頼られるくらいの力量あるっての」
「……はっ、やっぱ歩ちゃんは獅子に甘いよ」
満足げに笑う歩と呆れたように笑う番犬。
両極端な2人を眺めて口角が緩む。
「ありがとな」
未だぎこちないであろうお礼に、奴らは柔らかく笑った。