散らないサクラ


何年たっても決して消える事のない男への情は未だ健在。

だけどもう不安にならないのは、お前が俺への愛情をしっかりと示してくれるからだ。

今もほら、握り返してくれるその手の熱が愛情だと、知っている。



「あと、お前を幸せにしてくれって言われた」

「――――……ばかだね」

「そんで俺も幸せになれってよ」



それが奴にとっての決別、激励、他にも色んな意味合いが含まっていたに違いない。

それを確かめる術はないけれど、分かる。

同じ女を愛した男とし思いは言わずして伝わってきた。



弥生の瞳が薄い涙の膜で覆われる。

ゆっくりと優しく引き寄せ、抱きしめる。

身体に伝わる温もりと、腹の中にある一つの命の存在。

二つの生命をこの腕に抱き締めると同時に戦慄した。




――――ああ、これは俺の守るべき、命。




「弥生」



柔らかい音色が口から出ると、身体を引き離し、弥生の左手を右手で、右手を左手で握り締める。



「……お前に俺の子供が出来て、嬉しい」

「――――!」



息を飲み、見つめ返されるその瞳。

愛しいと思う感情。



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