散らないサクラ
――――『……“嬉しい”って思ったの? “嬉しい”って伝えたの?』
「お前があんまりにもあっさり言うから実感沸かなくて、驚いちまって、言葉も出なかったけど。……お前との間に、命を宿せて嬉しい。嬉しくないはずがねえ」
番犬、お前が正しいと思ったのはこれが最初で最後かもしれない。
何よりも大事な事だった。
愛しい女の中に宿った愛しい命。
その出会いを共に喜び、共に祝わなければいけないのは俺だったのに。
罷り間違っても“やば、失敗しちまった”なんて思うはずがねえ。
――――嬉しかったんだよ、素直に。
「真っ先に言ってやれなくて悪かった。2人の命を宿してくれてありがとう」
「…………っ、はー……、秋、反則」
ほろり、とこぼれ落ちた愛しい女の涙が頬を伝って地面に落ちる。
顔を近づけて瞳付近に唇を落とす。
ちゅ、と可愛い音を残し離れると照れくさそうにハニカム弥生の笑顔。
広がる、広がっていく、この思い。