散らないサクラ



弥生の手を握ったまま、砂利敷き詰められたそこに片膝立ちになる。

試験の合格発表ですら高鳴らなかった心臓がバクバクと口から出そうなほど唸る。



「佐倉弥生、俺、獅堂秋羽は如何なる時も、お前を守ると約束する、一緒にいると約束する、幸せにすると約束する。……子供も作り、その子を愛し、共に育てると約束する」



一瞬、墓石を見る。



この場所、榎本竜二の墓に来るのを拒み続けた理由。

此処は俺にとって教会なんかよりも神聖な場所に思えたからだ。

そんじょそこらの覚悟では榎本竜二、アンタの前に顔向けなんで出来やしない。

アンタに顔を見せる時は弥生を守れるほどの一人前の男になれた時だ。

その姿を晒す時以外、此処に来ることはしないと、それはささやかながら男としての誓いだった。



だから、なぁ、聞いてっかよ。

弥生とアンタ、そして腹にいる俺たちの新しい命に、



――――誓ってやる。




「死がふたりを分かつまで、共に有り続けると誓う」



柄じゃない台詞、柄じゃない格好。

だが、お前の為ならいくらでも晒してやる。



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