散らないサクラ
「俺と結婚してくれ、弥生」
見上げた弥生の顔は驚きと言うよりも、何処か寂しそうにも、そして満たされたようにも見えた。
「お前のプロポーズは白紙だ。さすがにこれは男にカッコつけさせろよ」
「ふ、あははっ! カッコイイねぇ、秋羽ァ」
餓鬼みたいな笑顔を守っていたい。
時には崩れるだろう、だけどそれを含めてお前を幸せにすると誓う。
……アンタの分まで幸せにすると誓う。
「秋羽、あたしね、してもらってばっかりじゃ性に合わないの。だから、あたしもあんたを幸せにするって約束するよ」
柔らかく微笑んだ顔の中に凛と立つ桜が見えた。
「結婚します」
いつだって、お前の中の桜は散ることを恐れず堂々と咲き誇る。
眩しく誇らしく美しい、俺のサクラ。
【 おしまい 】