散らないサクラ


なんで?

ほんとうに、おかあさんはおれのおかあさんじゃないの?

だからおれなんかにかまってくれないの?



きがつけば、はしりだしていた。

おとうさんはおれにせなかをむけていて、きっとおれがはしりだしたことにきづいていない。

ふん、こうつごうってやつだ。

ときどきころびそうになるのをこらえながら、ひっしにはしった。




ゆうえんちは、かぞくがいっぱいいた。



「……いいなぁ」



おれだってほんとうは、おとうさん、おかあさんとくるはずだったのに。

いっしょにコーヒーカップのって、メリーゴーランドはばしゃの形のやつにのって。

それからふれあいひろばで、うさぎにえさをやって。

ソフトクリームたべて、かんらんしゃのって。

それから……、それから……。



かんがえてかなしくなった。

おれはあるくのもつかれて、ベンチにすわる。

あ、そうだ。

マジンレンジャーのショーもみたかったんだ。

……でも、いいや。

どうせおかあさんこないし、みんなでみなきゃいみがないんだ。

そうだよ、おとうさんとおかあさんがいないと、いみないのに。



ぼたり、ひざのうえになみだがおちた。

なかないっておもったのに、かってにでてきてとまらない。

はなみずもでてきて、かっこわるい。



「……うっ、うぇぇ……。お、おかあさ、おかあさんっ」

「――――泰雅!」



おれのなまえがきこえて、かおをあげると、すごいかおをしてはしってくるおとうさん。

びっくりしてかたがふるえる。

こ、こわい。



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